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会長声明・決議

死刑の執行に抗議し、死刑制度の廃止を求める会長声明

2017(平成29)年12月19日、2名に対して死刑が執行された。第2次安倍内閣発足以降、死刑の執行は12回目、21名が執行されたことになる。今回の2名は、いずれも弁護人が付いて再審を請求している中での執行であった。

当会は、2016(平成28)年9月の臨時総会において「死刑廃止を求める決議」を採択した。また、日本弁護士連合会も、同年10月の人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択している。

死刑を行うということは、この世に生きる値打ちのない生命があるということを国家が正面から宣言することにほかならない。私たちが目指すべきは、罪を犯した人の更生の道を完全に閉ざすことなく、すべての人が尊厳を持って共生できる社会である。

刑事司法は常に誤判の危険と隣り合わせにある。犯人性を誤って認定するという全くのえん罪事件のみならず、量刑に影響を及ぼす事情についての誤認によって、死刑か無期懲役かの判断を誤るおそれもある。いかなる裁判制度においても、このような誤判のリスクを完全になくすことはできない。まして、現在の日本の刑事裁判制度においては、死刑が問題となる事件についても、裁判官(裁判員)の全員一致制、自動上訴制度、再審請求に対する国選弁護制度といった、特別な手続きも用意されていない。誤判によって死刑に処せられる危険性を払拭できない以上、そのことだけでも死刑制度を維持することは正当化できない。

死刑制度に関しては、被害者遺族の感情を根拠にその必要性が語られることが少なくない。もとより、犯罪により身内を亡くされた被害者遺族の方が厳罰を望むことはごく自然なことであり、その心情は十分に理解できる。しかし、刑罰制度の根拠は、犯罪被害者や遺族の報復感情に尽きるものではなく、刑種の選択と量刑の決定にあたり、犯罪被害者や遺族の感情を考慮するのは当然としても、それのみを決定的な要素とすることはできない。死刑制度の廃止は、刑罰制度全体を見直し、犯罪被害者や遺族に対する支援と並行して進めていくべきものであり、犯罪被害者や遺族の支援と矛盾するものではない。

今回執行されたうちの1名は犯行当時少年であった。少年による犯罪は、成育環境の影響が非常に強いものであり、少年に全責任を負わせて死刑にすることには大きな問題がある。

このほか、死刑に犯罪抑止効果があるか疑問であること、死刑廃止が世界的な潮流であり、日本もこれまでに再三にわたって国連から死刑廃止を前向きに検討するべきであるとの勧告を受け続けていることなど、死刑制度を維持すべきでない状況がある。

当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、直ちに死刑執行を停止した上で、死刑に関する詳細な情報を公開し、死刑制度の廃止について全社会的議論を深め、日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに、死刑制度を廃止することを求めるものである。

2018(平成30)年1月19日

滋賀弁護士会
会長 佐口 裕之