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会長声明・決議

裁判所速記官の活用及び養成再開を再度求める会長声明

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当会は,2014(平成26)年1月27日,裁判所速記官の活用及び養成再開を求める会長声明を発表した。これまで,当会以外に全国の19単位弁護士会,2弁護士会連合会からも,声明等の意見表明が行われ,いずれも,最高裁判所に速記官の養成再開を求めるものである。

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しかし,その後も,最高裁判所は,速記官の養成を再開せず,速記官の数は減少することはあれ,増加することは無い状況が続いている。速記が必要な尋問が長時間に及ぶ場合,速記官は40分ないし1時間で交代が必要となるところ,複数の速記官が配置されていなければ,速記録を作成することは事実上不可能となる。複数の速記官配置が確保されなければ,その裁判所において,速記官を活用できる期日が僅少にならざるを得ない。現在,大津地方裁判所においては,2名の速記官が配置されているが,これが1名になると,速記官を活用できる事件が激減することが懸念される。

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当会の前記会長声明でも指摘しているように,裁判所速記官制度は,裁判記録の正確さや公正さを担保するとともに,迅速な裁判の実現にも資するものであり,特に,国民の司法参加が強く求められている現在,裁判に必要不可欠な制度である。そして,裁判員裁判における尋問の際には速記官を活用し,訴訟当事者が即時に速記録を閲覧等できるようにするべきである。大津地方裁判所における裁判員裁判対象事件の起訴件数は,同規模他庁と比べても多数である(平成29年の起訴件数は大津地方裁判所は14件であるが,奈良地方裁判所は8件,和歌山地方裁判所は7件であり,制度開始から同年末までの起訴件数の合計は大津地方裁判所134件,奈良地方裁判所100件,和歌山地方裁判所95件である。)。大津地方裁判所においては,裁判員裁判での速記官活用の重要性は高いといえる。

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また,当会の前記会長声明では,聴覚障がい者の,裁判を受ける権利や裁判員になる権利を保障するには,速記による情報保障が不可欠であることを指摘している。この点,2016(平成28)年4月1日から「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行されているところ,この法律の趣旨からすると,裁判所においても社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮が求められているということができる。この点からも,以前にも増して,速記官制度の維持と充実が社会的な要請として必要とされると考える。

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このように,大津地方裁判所における裁判員裁判の件数が多いこと,現在2名しか速記官が配置されておらず,今後,速記官を活用できる事件が減少する心配があること,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行され障がい者に対する合理的配慮について社会的要請が高まっていることから,裁判所速記官のさらなる活用と一刻も早い速記官の養成再開を,再度,強く求める。

以上
2018(平成30)年4月18日

滋賀弁護士会
会長 片山 聡