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会長声明・決議

適正な取調べの実現のため,在宅被疑者を含めた全事件全過程の取調べの全面的可視化及び取調べへの弁護人の立会の実現を求める会長声明

本年4月に実施された滋賀県議会議員選挙の選挙違反について,候補者であった男性及び陣営関係者の女性に対し,大津警察署において滋賀県警察による任意の事情聴取が行われ,体調不良により,それぞれ救急搬送されたとの報道がされている。

水分補給も許されず,「逃げも隠れもしないから,明日朝から調べたら良いのではないか」との申出も聞き入れられず,休憩なしに深夜にまで及ぶ長時間の取調べが継続され,体調不良の訴えも聞き入れられなかったとされている。報道中にある上記候補者であった方の主張が真実であれば,被疑者の意に反して,休憩も取らせず長時間の取調べが継続された点で,令状なしに逮捕したのと同様の状態におかれたものであり,令状主義の精神を没却する違法の疑いが強い。また,水分補給も許さず,体調不良の訴えも聞き入れなかったとの点については,苦痛を与えて自白を強要する違法不当な取調べであったことが疑われる。

これに対し,滋賀県警察からは「取調べ前に体調を確認し,食事や休憩の提案を行うなど適正に対応した」とのコメントがなされたとのことである。

もし,上記事情聴取の全過程が録音・録画されていれば,事情聴取の態様等について,異なる主張がなされることはなかったと思われる。

当会は,2007(平成19)年6月11日に「取調べの全過程の可視化(録音・録画)を求める会長声明」を発出し,違法,不当な取調べと,虚偽の自白による冤罪を防ぐためには,取調べの可視化が必要である旨を指摘している。

本年6月1日より,取調べの可視化を定めた改正刑事訴訟法が施行されているが,可視化の対象は,身体拘束された被疑者であって,裁判員裁判対象事件及び検察庁独自捜査事件に限られており,上記選挙違反事件のような逮捕・勾留されていない在宅事件や裁判員裁判非対象事件など大多数の事件は除外されており,不十分である。取調べの適正確保の必要性は,事件の重さや種類,逮捕・勾留されていない在宅被疑者であっても変わりがない。

また,取調べの適正を確保するためには,単に,録音・録画による事後的な検証機会の確保だけでなく,憲法で保障された弁護人の援助を受ける権利を実質的に確立するために,取調べへの弁護人の立会の実現もなされる必要がある。

そこで,当会は,適正な取調べの確保のために,罪名を問わず,また,身体拘束の有無を問わず,全ての事件の全過程の取調べにおいて,全面的可視化(録音・録画)の導入を求めると共に,取調べへの弁護人の立会の実現を求める。

2019(令和元)年6月11日

滋賀弁護士会
会長 永芳 明