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会長声明・決議

最低賃金額の大幅な引上げを求める会長声明


 現在,中央最低賃金審議会では,2020年度地域別最低賃金額改定の目安についての議論がなされており,近いうちに,厚生労働大臣に対し答申が行われる見込みである。

 昨年,同審議会は,全国加重平均27円の引上げ(全国加重平均901円)を答申し,これに基づき各地の地域別最低賃金審議会において地域別最低賃金額が決定され,滋賀県では時給866円にとどまっている。

 

 この全国平均の901円という水準は,1日8時間,週40時間働いたとしても,月収15万7000円,年収約188万円にしかならない。さらに滋賀県の最低賃金額である866円で計算すると,月収15万円,年収約180万円という低い水準である。これは,いわゆるワーキングプア水準と呼ばれる年収200万円を大きく下回っている。このような低い水準の最低賃金額では,最低賃金法第1条が目的として掲げる「労働者の生活の安定」を図ることはできない。

 

 また,最低賃金額の地域間格差の推移を見ると2002年度の東京都(全国最高額)と滋賀県の差は57円であるのに対し,2019年度はその差が147円に拡大している。一般的に最低賃金額の高低と人口の転入出には強い相関関係があり,人口流出による労働力不足が原因で最低賃金額の低い地方の経済が停滞し,地域間の格差が固定ないし拡大することが懸念される。労働力の流出を食い止め,地域経済を活性化させるためにも,地方の最低賃金額を大幅に上げる方向での地域間格差の縮小が不可欠である。

 

 他方,今般の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,経営基盤が脆弱な企業の倒産や廃業への懸念が広がる中で,雇用を維持するために最低賃金額の引上げを抑制すべきという議論がなされている。

 しかし,経営基盤が脆弱な企業に対しては,社会保険料の減免や減税,補助金支給などの経済的施策を中心に支援を進めるべきであり,低賃金労働者の賃金を抑制するという方法を採るべきではない。

 

 政府は,2010年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」において,2020年までに全国加重平均を1000円にするという目標を定めている。本年がその目標年であるが,現状では達成困難であると言わざるを得ない。中央最低賃金審議会は,本年度,全国全ての地域において,最低賃金額の大幅な引上げを答申すべきである。

 また,上記答申がなされた後に各地の実情に応じた審議が予定されている各地方最低賃金審議会においても,以上のような状況を踏まえ,最低賃金額の大幅な引上げを図り,地域経済の健全な発展を促すとともに,労働者の健康で文化的な生活を確保すべきである。

 

2020(令和2)年7月15日

           滋賀弁護士会

            会長 西川 真美子