会長声明・決議
新型コロナウイルス感染症に関わる差別を許さない会長声明
新型コロナウイルス感染症は、我が国でも第3波と言われる深刻な感染拡大状況にある。政府は、1都3県に対して再び緊急事態宣言の発令をし、更に、栃木県、愛知県、岐阜県、大阪府、兵庫県、京都府、及び福岡県を対象に緊急事態宣言の対象地域を拡大した。滋賀県においても、1日で最大57人の陽性者が判明するなど、感染拡大の傾向は非常に憂慮すべき事態となっており、もはや誰が感染者となってもおかしくない状態にある。
感染拡大により、医療崩壊の危機が現実的なものとなる中、新型コロナウイルスの感染者等を社会的に排除しようする状況が発生している。例えば、感染者・医療関係者等に対するSNS上での誹謗中傷、感染者が確認された学校・施設等に対する非難、医療関係者等の子どもの通園・通学拒否、感染者の自宅への投石、県外ナンバー車・長距離運転業者の排斥、感染者のプライバシー侵害及びこれらを誘発する言動など様々な偏見差別が生じている。
感染症を理由とする差別は、人が人として有する基本的人権を侵害するものであり、断じて許されるものではない。
このような事態に想起すべきは過去のハンセン病患者への対応であり、ハンセン病に対する誤った理解に基づく偏見差別から、ハンセン病患者を社会から排除し、人間の尊厳を踏みにじる深刻な人権侵害を生じさせた。私たちは、ハンセン病患者に対する偏見差別の歴史を学んでその教訓を生かし、これまでに明らかとなった科学的な知見に基づいて、新型コロナウイルス感染症に対する冷静な対応を取り、基本的人権を尊重し、差別のない社会を実現しなければならない。
当会は、社会に暮らす全ての人々に対し、人権に配慮した冷静な対応を取るよう呼びかけると共に、新型コロナウイルス感染症に関わる偏見差別・人権侵害が見られる中、被害に遭われた方に対する法的支援の提供に尽力し、偏見差別を生み出さない社会を築くための努力を引き続き行う決意を表明する。
2021(令和3)年1月21日
滋賀弁護士会
会長 西 川 真美子