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会長声明・決議

「オンライン接見」の実現を求める会長声明

「オンライン接見」の実現を求める会長声明

 

1 現在,刑事手続のIT化の議論が,法務省の「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」(以下,「本検討会」という。)で進められている。本検討会では,刑事手続について情報通信技術を活用する方策に関し,現行法上の法的課題を抽出・整理した上で,その在り方が検討され,2022(令和4)年2月10日付で「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」取りまとめ報告書(案)が発表された。

 

2 本検討会における論点項目について,「書類の電子データ化、発受のオンライン化」「捜査・公判における手続の非対面・遠隔化」が挙げられており,この中に被疑者・被告人との接見交通についても論点項目として掲げられている。情報通信技術の刑事司法への導入は,捜査機関や裁判所の効率化,利便性,あるいは感染症対策のみを考慮するのではなく,被疑者・被告人の権利保障を図るという点を第一にして検討が進められるべきである。

 

被疑者・被告人は、憲法第34条によって弁護人の援助を受ける権利を有する。弁護人が刑事収容施設に赴いて接見するだけでなく,オンラインを活用した接見交通を実現し,即時に助言できるようになれば,弁護人の援助を受ける権利をより一層充実させることができる。

 

3 現在,日本弁護士連合会では,逮捕段階における公的弁護制度の創設が議論されている。逮捕段階から充実した弁護活動を実施するためには,逮捕されて間もない時点における迅速な接見を可能にするため,オンラインを活用した接見交通を実現する必要性が高い。

 

また,身体を拘束された被疑者・被告人が十分な防御準備をするためにも,書類の授受を含む接見交通のオンライン化の必要性がある。当会には,例えば高島警察署のように,遠隔地にある警察署が複数ある。加えて,大津地方裁判所彦根支部、同長浜支部に係属する事件の被告人につき,大津市内の滋賀刑務所に収容される者も少なくない上に,県外の京都拘置所に収容される例もある。さらに,接見へ赴く際,風雪等により,公共交通機関が遅延・利用停止となることもある。

 

このように,当会においても,遠隔地にある刑事収容施設が複数ある上,風雪等により,速やかな接見が妨げられる場合があるという実情が存在している。そのため,当会は,オンラインを活用した接見交通が実現されることを希望している。

 

4 本検討会における議論の中で,オンラインを活用した接見交通については,被疑者・被告人の逃亡や罪証隠滅に繋がり得る行為を防止することが困難である等の弊害や,設備・予算等の問題点が指摘されているようである。

 

しかし,上記で指摘されている弊害は,抽象的な可能性を指摘するものにすぎず,一律に禁止する理由とはならない。

 

また,新たな設備の整備やそれに伴う予算措置が必要なのは,令状手続のオンライン化をはじめとする刑事手続のIT化全般に妥当することである。遅滞なく通信し,協議するための十分な機会・時間及び設備を提供されなければならないことは,国連被拘禁者処遇最低基準規則にも定められているところであり,被疑者・被告人が弁護人の援助を受ける権利を実現するための設備等も,当然に国の責任において提供されるべきである。

 

5 さらに,オンライン接見を利用する際,捜査機関が弁護人に気付かれることなく接見内容を傍受することは技術的に可能である。このため,オンライン接見においても,黙秘権・秘密接見交通権が保障され,弁護人の秘密保持の権利も保障されなければならない。また,今後のオンライン接見では,秘密接見交通権が保障されるよう,傍受が不可能な技術的措置を講じた接見が実現されなければならない。

 

6 刑事手続のIT化の議論は,何よりも被疑者・被告人の人権保障を拡充するという観点で進められるべきである。

 

当会は,オンラインを活用した接見交通の実現に向け,本検討会終了後も,更に具体的な議論が尽くされることを期待する。

 

以上

 

2022(令和4)年3月14日

 

滋賀弁護士会      

会 長 森 野 有 香

 

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