会長声明・決議
死刑執行に抗議し、死刑制度の廃止を求める会長声明
2022(令和4)年7月26日、東京拘置所において1名の死刑が執行された。
死刑は、その人をこの世から排除する非人道的な刑罰であって、この世に生きる値打ちのない生命があるということを国家が正面から宣言するものである。これは、「生命の尊厳は絶対である」という人権思想に反する。
また、死刑は、誤判・えん罪があった場合に取り返しがつかない事態を招く。現に日本では、死刑を宣告されながら後に無罪であることが判明し確定した再審事件がすでに4件存在している。
このようなことから、当会では、2016(平成28)年9月27日の臨時総会において、「死刑廃止を求める決議」を採択し、その後も、死刑執行に抗議する声明をたびたび発出してきた。
また、日本弁護士連合会も2016(平成28)年10月7日に開催された第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、死刑制度の廃止に向けて活動している。
そして、死刑の廃止は国際的な趨勢でもあり、OECD(経済協力開発機構)加盟国38か国のうちで、死刑を国家として統一的に執行しているのは、日本だけである。死刑制度廃止を視野に入れて死刑の執行を停止すべきとの国連決議や勧告を無視して、死刑を執行し続ける日本政府の態度は、この分野における日本の国際的孤立を深めるものである。
もとより、被害者や遺族の方々の心情に寄り添い、支援することが重要であることは言うまでもないが、このことは必ずしも死刑制度を廃止することと矛盾するものではない。
以上より、当会は、犯罪被害者支援のための精神的・経済的支援体制等のさらなる拡充を求めるとともに、今回の死刑執行に対して強く抗議し、直ちに死刑の執行を停止した上で、死刑に関する詳細な情報を広く国民に公開し、死刑制度について社会的議論を深め、死刑制度を廃止するよう重ねて求める。
2022(令和4)年8月9日
滋賀弁護士会
会長 山 本 久 子