どんなお悩みでも、まずはご相談を!

滋賀弁護士会法律相談センター TEL077-522-3238
平日午前9時-正午
午後1時-4時

会長声明・決議

新型コロナワクチン未接種者に対する差別や偏見を許さない会長声明

 報道によれば、滋賀県甲賀広域行政組合消防本部は、2021(令和3)年4月、同消防本部警防課で勤務していた職員が、過去に別のワクチン接種で副反応が出たことを理由に、新型コロナウイルスのワクチン接種をしない意向を示したところ、同年5月1日から8月末に同職員が退職するに至るまで、同職員に対して、警防課と同じ階の廊下脇にある協議スペースの机で勤務することを求め、また、共用の更衣室の利用を制限して、現場への出勤時以外は私服での勤務を余儀なくさせたり、また、職場内での行動を記録して提出することを求めたりしたとされている。さらに、同本部は、同年5月13日付け消防長名義で作成した「ワクチン接種拒否者への業務区別」と題した内部文書に、同職員の執務場所や業務内容などを盛り込んだ上、対象職員の氏名は記さないものの「警防課員」であるとして、全職員や来庁者などとの接触制限を各所属長に対して求める旨、及び、「ワクチン接種拒否者」はこれと同様の扱いにする旨を記載し、これを全職員約200人に回覧させたとされている。

 ワクチンをめぐっては、アナフィラキシーショックや心筋炎その他の重篤な副反応例が紹介されていること等の不安から、接種を見送り、あるいは、健康上の理由等から接種できない方々も多数存在する。本来、ワクチンを接種するかどうかは、自己決定に委ねられるべき事柄である。このことは、新型コロナウイルスのワクチンの接種について定めた予防接種法改正の際に、衆参両院の附帯決議において「接種するかしないかは国民自らの意思に委ねられるものであることを周知すること」と特に確認されているところである。そして、接種を拒否したことを理由として差別的に取り扱うことは、接種を事実上強制するに等しく、憲法第13条が保障する自己決定権を実質的に侵害するというべきであり、許されるものではない。

 当会としては、滋賀県甲賀広域行政組合消防本部において、速やかに第三者委員会を設置し、中立かつ公正な立場の委員らによる事実確認や検証を行い、本件に関する問題の有無を徹底的に調査するとともに、同本部における適切な対応を求める。

 また、当会は、2021(令和3)年1月21日、「新型コロナウイルス感染症に関わる差別を許さない会長声明」を発出し、新型コロナウイルス感染症に関わる偏見差別・人権侵害の被害に遭われた方に対する法的支援の提供に尽力し、偏見差別を生み出さない社会を築くための努力を引き続き行う決意を表明したところであるが、これからも、新型コロナウイルスのワクチン未接種者に対する差別や偏見はもとより、新型コロナウイルス感染症に関わるあらゆる差別や偏見が許されないことを発信し続け、差別や偏見を防止するため全力で取り組むことを、改めてここに表明する。

 2023(令和5)年6月13日

                                                        滋賀弁護士会
     会長 中 井 陽 一