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会長声明・決議

最低賃金額の大幅な引き上げと中小企業への実効的な支援等を求める会長声明

 中央最低賃金審議会は2024(令和6)年6月25日から今年度の地域別最低賃金額改定の目安についての審議を開始し、近日中に厚生労働大臣に対して答申が行われる見込みである。

 昨年、同審議会は全国加重平均41円の引き上げを答申し、令和5年度の最低賃金の全国加重平均額は1004円となった。しかし、滋賀県の令和5年度の最低賃金額は全国加重平均額を大きく下回る967円にとどまっており、1日8時間、週40時間、年52週働いたとしても、月収16万7613円、年収201万1360円にしかならない。
 国際的な原材料価格の上昇や、近年に類を見ない円安の進行の影響で、食料品や光熱費など生活関連品の価格は上昇し続けていることからすれば、令和5年度の最低賃金額では、安心して暮らせるだけの賃金水準には到底達していない。労働者の生活を守り、経済を活性化させるためには、大企業だけでなく中小・零細企業を含めたすべての労働者の実質賃金の上昇または維持を実現する必要があり、そのためにはまず最低賃金額を大きく引き上げることが重要である。

 また、依然として是正されていない最低賃金額の地域間格差の解消も重要な課題である。2023(令和5)年の最低賃金額は、最も高い東京都で時給1113円であるのに対し、滋賀県の最低賃金額は967円と東京都より146円も低額で、この金額差は2022(令和4)年と比較してむしろ大きくなっている。最近の調査によれば、労働者の生計費は都市部と地方の間でほとんど差がないという分析がなされており、この点からも、地方の最低賃金額を都市部の水準にまで引き上げることが検討されるべきである。

 一方で、地域経済を支える中小企業への支援策も不可欠である。最低賃金引き上げに伴う中小企業への支援策について、現在、国は「業務改善助成金」制度等による支援を実施しているが、その支援は未だ十分とは言いがたい。最低賃金を引き上げても、日本の経済を支えている中小企業が円滑に企業運営を行うことができるよう、社会保険料の事業主負担分の減免などの十分な支援策を講じることが必要である。

 例年、厚生労働大臣は6月頃に中央最低賃金審議会へ地域別最低賃金額の改定の目安についての諮問を行い、7月には同審議会から厚生労働大臣に対して答申がなされている。この答申を受け、各地の最低賃金審議会において当該地域別最低賃金に関する審議がなされ、当該地域の労働局長によって最低賃金額が決定される。
 今年度も同様の流れが見込まれるが、当会は、中央最低賃金審議会に対し、今年度、全国すべての地域について、最低賃金の大幅な引き上げを答申することを求めるとともに、国に対して、最低賃金の大幅な引き上げに当たり、業務改善助成金制度の改善や、社会保険料の事業主負担部分の大幅な減免措置を講じるなど、中小企業に対する十分な支援策を講じることを求める。
 また、中央最低賃金審議会の答申がなされた後に審議が予定されている滋賀地方最低賃金審議会においても、以上のような状況を踏まえ、地域経済の健全な発展を促すとともに、労働者の健康で文化的な生活を確保できるよう最低賃金額の大幅な引き上げを答申することを求める。

2024(令和6)年7月10日
滋賀弁護士会         
会 長  多 賀 安 彦