会長声明・決議
滋賀県警察において多数の刑事事件の証拠品が放置されていた事案に対して抗議し、調査及び再発防止策を求める会長声明
2024(令和6)年11月13日、滋賀県警察の7つの警察署(彦根警察署、守山警察署、高島警察署、長浜警察署、木之本警察署、東近江警察署、大津北警察署)において、銃器、違法薬物、刀剣類などの物品のほか、防犯カメラ映像のDVDなど様々な証拠品が3829点も放置されていたことが判明し、また、放置されていた証拠品のうち、2241点についてはいずれの事件の証拠品かわからないと報じられた。
さらに翌14日には、放置されていた証拠品の中に、強盗殺人・死体遺棄事件や殺人事件に関係する証拠品(約200点)も含まれていたとも報じられた。
刑事訴訟法は、司法警察員が犯罪の捜査をしたときは、原則として、全事件を検察官に送致しなければならない(同法第246条)、公訴を提起するか否かは事件の送致を受けた検察官が判断する(同法第247条、第248条)と規定するところ、事件の送致を受けた検察官は「公益の代表者」(検察庁法第4条)として、被疑者・被告人等の主張に耳を傾け、積極・消極を問わず十分な証拠の収集・把握に努め、冷静かつ多角的にその評価を行う(検察の理念第4項)。すなわち、有罪方向の証拠のみならず、無罪方向の証拠をも総合的に評価して、起訴・不起訴を判断する。
したがって、警察が、検察官に送付する刑事事件に関する証拠を自らの判断で取捨選択することは許されず、全て検察官に送付しなければならない。
また、そのためには、警察は、刑事事件に関する証拠を収集した後、検察官に送付するまでの間、適切に保管しておくことが必要である。
そもそも、刑事事件の証拠は、真実発見のために不可欠な公共財であり、適切に保管しなければならないことは言うまでもない。
警察が、刑事事件に関する証拠を杜撰に保管する、或いは、恣意的に選別して検察官に送付することになれば、検察官の公訴についての判断を誤らせ、ひいてはえん罪事件に繋がることになる。実際、再審無罪判決が確定した湖東事件を始め、警察が証拠を検察官に送致していなかったことや適切に保管していなかったことが原因となったえん罪事案が複数発生している。
そこで、当会は、滋賀県警察本部に対し、滋賀県警察における複数の警察署において多数の刑事事件の証拠品が放置されていたことについて厳重に抗議するとともに、なぜこのようなことが起こったのかについて、第三者による検証を行うよう求める。具体的には、日本弁護士連合会策定の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に沿った第三者委員会を設置し、多数の刑事事件の証拠品の放置が起こった原因を究明すること及び組織的・実効的な再発防止策を策定して公表することを求める。その上で、滋賀県警察において、いずれの事件の証拠か判明しない証拠であっても事後的に適切な保管に努めること及び策定された再発防止策を速やかに実施することを求める。
以 上
2025(令和7)年3月14日
滋賀弁護士会
会長 多 賀 安 彦