会長声明・決議
死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体の設置等を求める会長声明
死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体の設置等を求める会長声明
2024(令和6)年11月13日、「日本の死刑制度について考える懇話会」(以下「懇話会」という。)の報告書が公表された。
各界の有識者で構成された懇話会は、井田良座長(中央大学大学院教授、前法制審議会会長)の下、犯罪被害者のご遺族の方や研究者等、死刑制度に対して賛否双方の意見を有する方々からのヒアリングを行い、半年以上にわたって徹底した議論を行った。
その成果として取りまとめられた今回の報告書は、「国際社会の中の日本」という視点、誤判の可能性、被害者の視点、刑罰理論との関係、死刑の犯罪抑止力、執行と執行に至る手続をめぐる諸問題、情報公開と世論調査など、多岐にわたる論点について検討した上で「現行の日本の死刑制度とその現在の運用の在り方は、放置することの許されない数多くの問題を伴っており、現状のままに存続させてはならない。」との基本的認識を示し、「早急に、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置すること」を求めている。
懇話会の委員には、前検事総長や元警察庁長官、犯罪被害者のご遺族の方、与党の国会議員も含まれ、多様な構成となっている。このような懇話会が、全会一致の結論として、死刑制度を現状のままに存続させてはならないと指摘したことには重要な意味がある。
日本政府は、2022(令和4)年、国連自由権規約委員会の総括所見において、死刑廃止を検討するよう求められている。また、2022(令和4)年7月の執行以来、すでに2年半にわたって死刑の執行のない状態が続いている。昨年には袴田事件の再審無罪判決が確定し、えん罪による死刑執行の危険があらためて浮き彫りとなっている。政府は、今こそ、死刑制度について根本的な議論を行うべきである。
報告書に対して、内閣官房長官は「政府として死刑制度を廃止することは適当でないと考えており、現時点で制度の存廃などを検討する会議体を設けることは考えていない。」(2024(令和6)年11月14日)と述べている一方、内閣総理大臣は自由民主党内で議論を深めるのが望ましいとの認識を示したとも報道されている(同年12月18日)。政府はこれ以上、死刑制度に関する議論を先送りすべきではない。
当会は、2016(平成28)年に「死刑廃止を求める決議」を採択し、以来死刑制度の廃止を求め続けている。当会は、ここに改めて、死刑制度を廃止すること、死刑制度を廃止するまでの間死刑の執行を停止することを求めるとともに、政府に対し、懇話会の報告を尊重し、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置することを求める。
2025(令和7)年4月15日
滋賀弁護士会
会長 相 馬 宏 行