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会長声明・決議

速やかに選択的夫婦別姓制度の創設を実現することを求める会長声明


 今国会で選択的夫婦別姓制度の創設が実現するのか注目されている。
 現行の民法第750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定めて夫婦同姓を義務付けている。この規定は、婚姻に際して、当事者の一方に改姓を強制する点において、人格権を保障する憲法第13条に反するものであり、婚姻に「両性の合意」以外の要件を不当に加重して、不合理な制約を課すものである。また、現実には、94.5%の夫婦において女性が改姓している実態からすれば(2023(令和5)年内閣府男女共同参画局調べ)、事実上、女性に改姓を強制するものであって、憲法第13条及び第14条第1項の趣旨を反映した、婚姻における人格的自律権の尊重と両性の平等原則(憲法第24条第1項、同条第2項)にも反している。

 法制審議会が1996(平成8)年に選択的夫婦別姓制度を導入した民法改正案を答申して以来、すでに28年もの年月が経過した。国連女性差別撤廃委員会は、日本に対して、2003(平成15)年以降2024(令和6)年までに4度にわたり、婚姻に際し旧姓を維持することを選択できるようにする法改正についての勧告を発出している。

 2021(令和3)年6月23日、最高裁判所決定は、民法第750条を合憲と判断したものの、選択的夫婦別姓制度の導入を否定したものではなく、補足意見においては、国会においてこの問題をめぐる国民の様々な意見や社会の状況の変化等を十分に踏まえた真摯な議論がされることを期待するとして国会での議論を促し、4名の裁判官も、民法第750条について憲法第24条に違反するとの判断を示し、現行制度を早期に改正する立法行動を求めた。

 男女共同参画の取り組みと国際化が益々進み、社会が大きく変化した今日において、政府及び国会が、選択的夫婦別姓の実現に向けた措置を採らないことは、もはや許されることではない。

 国はこれまで、通称使用を広く認めることによって、改姓に伴う不利益を回避できるという立場をとってきた。しかし、2024(令和6)年6月に一般社団法人日本経済団体連合会が発表した提言によれば、「通称使用は日本独自の制度であることから、海外では理解されず、寧ろダブルネームとして不正を疑われ、説明に時間を要するなど、トラブルの種になることもある。」「ビジネスの現場においても、女性活躍が進めば進むほど通称使用による弊害が顕在化するようになった。」と指摘されており、通称使用では根本的な解決策とならないことや、国際的な潮流からの遅れが浮き彫りとなっている。

 当会は、これまでも、2010(平成22)年5月11日、2016(平成28)年1月14日、2021(令和3)年8月27日の3度にわたり、選択的夫婦別姓制度の法制化を求める会長声明を発出してきた。

 望まない改姓を強制されない選択的夫婦別姓制度が導入されれば、婚姻前から築いてきた仕事上の実績や評価を維持しやすくなり、ビジネスや研究など様々な分野での女性活躍に資することとなる。また、改姓に伴う、様々な届出、変更手続などの負担が軽減され、通称使用の限界からも解放される。選択的夫婦別姓制度は、国民の選択肢を増やす制度であり、これ以上、導入を先送りにする合理的理由は存在しない。

 そこで、当会は、民法第750条を改正し、選択的夫婦別姓制度の創設を速やかに実現することを強く求める。

2025(令和7)年5月21日

                             滋賀弁護士会                
                           会 長  相 馬 宏 行