会長声明・決議
弁護士報酬の敗訴者負担の導入に反対する決議
滋賀弁護士会は、平成13年(2001年)3月25日、司法制度改革審議会中間報告に対して、弁護士報酬の敗訴者負担制度導入に反対する会長声明を出して反対の意思を表明したが、以下に述べる理由から、あらためて弁護士報酬の一般的な敗訴者負担制度の導入に強く反対する。
1 市民の司法へのアクセスを抑制
司法制度改革審議会は『弁護士報酬を相手方から回収できないため訴訟を回避せざるを得なかった当事者に訴訟を利用しやすくする。』としているが、そのような事例はほとんど存在しない。裁判の見通しを判断することは困難な場合が多く、制度が導入されれば、敗訴しても相手方の弁護士報酬を負担できる経済的強者だけが裁判を利用し、一般市民や中小企業のような経済的弱者は敗訴の場合のリスクを恐れて提訴をためらうことになってしまう。
また、裁判を起こされた場合には、敗訴を恐れて十分に応訴することができず、不本意な解決を強制されることになる。
これでは司法へのアクセスを抑制することになってしまい、裁判を市民がより利用しやすいものにしようという「市民のための司法改革」の理念に反する。
2 司法による人権保障機能を弱体化、法創造機能を阻害
司法は人権擁護の砦であり、人権を侵害された人々は最終的には裁判所に救いを求めざるをえない。とりわけ、薬害訴訟、公害環境訴訟、労働訴訟、消費者訴訟、医療訴訟、住民訴訟、行政訴訟などは、立法及び行政における人権侵害に対して救済の重要な役割を担ってきた。しかし、制度が導入されれば、これらの訴訟も抑制され、司法の人権保障機能を弱体化させ、社会の変化に対応した判例の発展や司法の活力ある法創造機能をも阻害することになる。
以上のとおり決議する。
2002(平成14)年12月2日