会長声明・決議
司法修習生の給費制維持を求める声明
平成15年6月9日、財務省の財務制度等審議会が「平成16年度予算編成の基本的考え方について」(建議)において、司法修習生に対する給費制の早期廃止を提言するなど、財務省を中心とした圧力が強まる中で、司法制度改革推進本部の法曹養成検討会も、平成15年7月14日の第18回検討会において、十分な議論も尽くさないまま「貸与制への移行という選択肢も含めて柔軟に検討する」という座長の取り纏めを行い、給費制廃止への動きが急速化している。
しかし、給費制は、修習生の生活を保障することで修習に専念させることにより、国家制度上の重要な環たる司法制度を担うに足る法曹を養成することを目的とするものであり、現行司法修習制度と不可分一体のものとして採用されてきた制度である。
この給費制の目的は、現在進行している数々の司法制度改革の中で、21世紀の社会が求める高い質の法曹を養成するという新しい法曹養成制度にも当然に妥当するものである。そして、国は司法制度改革実現のために必要な財政上の措置を講じる義務があることからすれば、単なる財政事情を理由に給費制を廃止することは全く不合理である。
また、新しい法曹養成制度においては、法曹を目指す者は2年ないし3年の法科大学院を経なければならず、仮に修習生の給費制が廃止されるなら、これと1年の司法修習期間を合わせて3年ないし4年間を無収入で乗り切らなければならないという経済的苦境に立たされ、それを理由に法曹となることを断念せざるをえない者を生じさせかねず、経済的富裕者のみにしか法曹の道が開かれないものとなってしまう。
さらに、給費制に代わる貸与制についても、法曹となっても必ずしも経済的な安定が保障されているわけでもなく、弁護士会費等でそれ相当の公的経済的負担があるなかでの返済は法曹としての経済的自立を害しかねず、また、プロボノ活動等の公的活動への参加も敬遠されかねない。なお、貸与制とリンクした裁判官、検察官任官者についての返還免除制度は、法曹という立場での司法制度その他の公益的な貢献度において差はないはずであるのに、官だけ優遇するという点で合理性を欠き、法曹三者の公平と平等を害するものといわねばならない。
したがって、司法修習生に対する国費による給費制を従前どおり堅持されるよう強く求める。
2003(平成15)年9月16日
滋賀弁護士会 会長 吉田和宏