会長声明・決議
自衛隊のイラク派遣に反対する会長声明
政府は、イラク特措法に基づき昨年12月9日に自衛隊派遣基本計画を閣議決定し、航空自衛隊の先遣隊が派遣されたのに引き続き、本月9日には航空自衛隊の本体及び陸上自衛隊の先遣隊に派遣命令が出され、近日中に陸上自衛隊の先遣隊が出発し、その数日後にはイラク南東部のサマワに入る予定とされている。
しかし、そもそもイラク特措法は、イラクにおける自衛隊の武力行使を容認するものであり、他国領土における武力行使を禁じた日本国憲法前文及び第9条に違反するおそれが極めて大きい。
また、イラク特措法の基本原則では、自衛隊の対応措置は、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域(非戦闘地域)において実施されるものとされ、武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならないと定められているが、イラクでは、連日のように米英兵等に対する攻撃や自爆テロが続き、その矛先は、国連や赤十字にも向けられ、ついに日本の外交官2名が殺害されるという痛ましい犠牲が出るに至り、フセイン元大統領の逮捕後も、事態が沈静化する兆しはない。
こうした状況でイラクに自衛隊が派遣されるならば、米英軍の協力者として格好の攻撃目標となり、自衛隊員が死傷する事態ばかりか、自衛隊員がイラク国民に対し武力による威嚇または武力の行使をせざるを得ない事態が発生するおそれが大きく、上記基本原則に照らし、現状のイラクへの自衛隊の派遣は到底許されるものでないことは明白である。
小泉首相が、「テロに屈してはならない」などと声高に強調し、日本国憲法の前文を都合よく引用して、なしくずし的に自衛隊のイラク派遣を強行することは、日本国憲法の平和主義の理念に背き、我が国の国際社会における「名誉ある地位」を失わしめる歴史的暴挙である。 当会は、以上の観点から自衛隊のイラク派遣に反対し、政府に対し自衛隊のイラク派遣の撤回を強く求めるものである。
2004(平成16)年1月13日
滋賀弁護士会 会長 吉田和宏