会長声明・決議
司法修習生の給費制の堅持を求める会長声明
司法制度改革推進本部法曹養成検討会は、本年6月15日開催の検討会において、平成18年度から、司法修習生に給与を支給する制度(給費制)を廃止し、一定額を貸し付ける制度(貸与制)を導入するとの意見のとりまとめを行なった。政府は、この秋に予定される臨時国会に貸与制を盛り込んだ裁判所法改正案など関連法案を提出する方針との報道がなされており、給費制廃止へ向けて大きく動き出そうとしている。
滋賀弁護士会は、2003年9月16日、司法修習生の給費制維持を求める会長声明を出し、司法修習生に対する給費制の堅持を求めたが、今般給費制廃止へ向けての動きが急展開を見せていることから、あらためて給費制の堅持を強く求めるものである。
法曹は国民の権利義務に直接かかわる重要な職務に携わるものであり、民主主義国家の根幹たる法の支配の重要な担い手として、法律的能力と人格・職業倫理の双方について高度なものが必要とされる。司法修習制度は、こうした認識に基づき、法の支配の担い手となるべき質の高い法曹を養成するために設けられた重要な制度である。このような司法修習の重要性に鑑み、司法修習生は修習に専念することとされ、そのために司法修習生に兼業・兼職を禁止して修習専念義務を課すとともに、その一方で、その生活を保障するために給費制が取られてきたのであり、給費制は現行司法修習制度と不可分一体のものということができる。そして、この給費制と一体となった司法修習制度の下で、貧富の差を問わず、社会の幅広い層から多様な人材が法曹の道へ進むことが可能となった。
新しい法曹養成制度においては、法曹資格を得るには、大学卒業後も法科大学院に2年ないし3年在学することが必要となり、司法修習生となる前の段階においてすでに経済的負担は相当大きなものとなる。そのうえ、給費制が廃止されることになれば、法曹を志す者に対し更なる経済的負担を強いることになり、法曹となるにふさわしい多くの有能な人材が経済的理由から法曹への道を断念し、その結果、一部の経済的富裕者しか法曹資格を取得できないという事態を招きかねない。
また、貸与制の下では、新人法曹がその出発点において多額の負債を抱えることになり、そのことは、新しく法曹、特に弁護士となる者が経済的理由から公益的な活動への参加に消極的になるという事態を生じさせるおそれがある。
近時の司法制度改革は、「身近で、頼りがいのある司法」を実現するために、司法の担い手である法曹について、その量とともに質の拡充を謳っている。給費制は司法修習制度と結びついて質の高い法曹の養成を目的とするものであり、これを廃止することは、質の高い法曹を養成しようという司法制度改革の趣旨にも反すると言わざるを得ない。
よって、滋賀弁護士会は、再度司法修習生に対する給費制を堅持することを強く求める。
2004(平成16)年7月12日
滋賀弁護士会 会長 桐山郁雄