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会長声明・決議

共謀罪の新設に反対する会長声明

「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(以下、「国連条約」といいます。)に基づき、国内法化を図るものとして、平成15年の通常国会から衆議院解散に伴う廃案を挟んで4国会にわたって継続審議となっている、「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下、「法案」といいます。)が、今国会において審議日程にあがっています。

法案においては「共謀罪」の新設がなされようとしておりますが、同罪は以下のように市民生活にとって重大な脅威となるもので看過できない問題を含んでいるので、当会としては同罪の新設に反対をします。

1 共謀罪は、
  • 長期4年以上の刑を定める犯罪について
  • 団体の活動として
  • 当該行為を実行するための組織により行われるものの
  • 遂行を共謀した者
は、
  • 5年以下の懲役または禁固(死刑、無期もしくは長期10年を超える懲役または禁固の刑が定められている罪の場合)
もしくは
  • 2年以下の懲役または禁固(長期4年以上10年以下の懲役または禁固の刑が定められている罪の場合)
に処する

とするものです。

2 ここに「共謀」とは、犯罪を共同で遂行しようという意思を合致させる謀議、謀議の結果として成立した合意をいいます。犯罪は、犯罪実行の意思形成、犯罪行為の準備、犯罪行為の実行着手、犯罪の結果発生という段階を踏んで成立するものですが、犯罪行為の実行のない準備行為は原則として不可罰であり、ましてや外形的行為の認められない意思形成の段階は処罰しない、というのが我が国の刑法の大原則です。

ところが、「共謀罪」は、犯罪意思形成の段階にすぎない「共謀」それ自体を処罰の対象とするものであり、刑法の原則に反するものです。

また、「共謀」という概念自体が非常に不明確なものであることも相まって、これが創設されるなら、思想信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由などの憲法上の基本的人権が、重大な脅威にさらされることとなります。 は疑いがありません。

3 また、法案の前提とされている国連条約第3条1項でさえ、条約の適用範囲として、「性質上越境的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するもの」として、対象団体を限定されています。しかし、法案にはそのような限定はなく、広く、政党、NPOなどの市民団体、労働組合、企業等も含まれることになり、共謀罪を根拠にこれらの団体に捜査の網がかぶせられることとなります。

さらに、国連条約第5条1項では、締約国がとらなければならない立法措置の要件として「金銭的利益その他物質的な利益を得ることに直接または間接に関連する目的のために重大犯罪を行うこと」を求めています。しかし、法案の共謀罪ではこのような縛りもかけられておらず、かえって、死刑、無期を含む長期4年以上の犯罪にその適用が拡大されているのです。その対象とされる犯罪の類型は現行法上557もの犯罪に及びます。

4 以上、共謀罪の新設は、刑法上の基本原則に反し、その人権保障機能にも反するものであるので、当会としてはこれに断固反対をするものであります。

2005(平成17)年7月12日

滋賀弁護士会 会長 生駒英司