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会長声明・決議

滋賀刑務所における受刑者死亡についての会長声明

2007年9月18日,滋賀刑務所は,同月16日に56歳の男性受刑者が急性腹膜炎で死亡したと発表した。

現段階で、刑務所が公開している情報によれば、受刑者は、9月16日午前2時10分ころから腹痛を訴え、看守が2度薬を与えたが、医師の診察は受けさせていなかった。同日午後10時前、看守が巡回した際、受刑者がベッドにぐったりしているのに気づき、救急車で病院に運んだが間もなく死亡が確認された、という。そして本件発表の際、滋賀刑務所総務部長は「休日に急病人が出たときは当直責任者に連絡しなければならないが、現場の判断で薬を与えてしまった。」と述べたとのことである。

当会は、本件事態を隠蔽することなく自ら公表した滋賀刑務所の態度は評価するが、本件事態が発生したことについて、次の見解を表明する。

被収容者の健康の保持とその疾病の治療は、拘禁を行う国の責務である。しかるに、現在の刑事施設における医療は、被収容者の数やその健康状態に見合った医師と医療スタッフを確保しておらず、また必要があれば被収容者を外部の医療機関へただちに移送できる体制が整備されていない。しかも、過剰収容のため、刑事施設における医療体制不足の問題は、一層深刻化していると考えられ、一刻も早い改善が必要である。

さらに、今回発生した事態については、看守が受刑者の腹痛の訴えに接してから医療機関につなぐまでに、約20時間も経過しており、また、「休日に急病人が出たときは当直責任者に連絡する」ルールが遵守されなかったことなど、本件受刑者に対する処置に問題がなかったかについて疑義があり、十分な調査が必要と考えられる。

当会は、滋賀刑務所及び法務省が、今回の死亡事例の原因を至急調査し、その結果を全国の刑事施設での再発防止に活かすように求めるとともに、法務省が、受刑者がいつでも適切な医療を受けられるような体制の整備と、それを可能とする予算措置を講じるなど、対策への一歩を進めることを求めるものである。

2007(平成19)年10月10日

滋賀弁護士会 会長 元永佐緒里