どんなお悩みでも、まずはご相談を!

滋賀弁護士会法律相談センター TEL077-522-3238
平日午前9時-正午
午後1時-4時

会長声明・決議

死刑執行に関する会長声明

1.本年2月1日、東京拘置所、大阪拘置所及び福岡拘置所において各1名、合計3名の死刑確定者に対して死刑が執行され、死刑執行は、平成18年12月から数えただけでも、合計16名に達した。
2.死刑については、生命の尊厳の観点から、また、死刑の犯罪抑止効果についての研究などを踏まえ、その存廃が議論されてきたが、現代の国際社会においては、死刑廃止が潮流となっている。
1989年、国連総会において国際人権 (自由権)規約第二選択議定書、いわゆる「死刑廃止条約」が採択された。1997年以降毎年国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)が行った「死刑廃止に関する決議」には、死刑存置国に対し、「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」との内容が盛り込まれている。

このような中で、死刑を法律で廃止し、あるいは10年以上執行していない事実上の廃止国は着実に増加してきた。

そして、2007年12月18日には、国連総会本会議において、すべての死刑存置国に対して、死刑執行の停止を求める決議が採択された。

3.死刑問題についての日本の現状は、国際社会の批判を呼び起こしている。
2007年5月18日に示された国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・報告においては、わが国の死刑制度の問題点を端的に指摘した上で、死刑の執行を速やかに停止するべきことが勧告された。

上記2007年12月18日の国連総会本会議決議の採択に先立ち、折しもその直前の時期に行われた日本の死刑執行に対して国連人権高等弁務官から強い遺憾の意が表明されるに至った。

4.わが国において、4件の死刑確定者に対し再審無罪が言い渡された事実は、死刑確定判決についてすら誤判の危険性があることを証明している。わが国刑事訴訟における自白偏重の傾向、長期の身柄拘束、捜査機関による取調べの場での日常的な自白強要の横行など、誤判が生ずる構造的危険性はこれら4冤罪の発生当時から未だに解消されていない。すなわち、誤った裁判により死刑の執行がなされる危険性は払拭できないものである。
当会は、国際社会の要請に背をむけるかのように、死刑執行を増加させる政府の態度に強い遺憾の意を表明する。
国際社会が死刑廃止に向けて進んでいる中、日本においては、死刑制度の存廃について国民の議論も未だ十分に行われていない。

5.当会は、政府に対し、死刑制度全般に対する情報を広く国民に開示して国民の議論に資する正確な情報を提供するとともに、死刑制度に対する国民的議論が充分に尽くされるまで死刑の執行を事実上停止することを求める。

2008年(平成20年)2月13日

滋賀弁護士会 会長 元永佐緒里