会長声明・決議
死刑執行に関する会長声明
1.本年9月11日、東京拘置所において1名、大阪拘置所において2名、合計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。前法務大臣の下、在任月数わずか11ヶ月の間に13名もの死刑執行がなされて、さながら大量執行の様相を呈しており、今回、さらに3名の死刑執行が行われたことについては、深い憂慮の念を禁じえない。近年、重罰化傾向のもと、死刑判決が多発し、本年9月11日現在で、死刑確定囚は102名に達しており、今後も続々と大量の執行が危惧される深刻な事態になっている。
2.死刑については、1989年12月の国連総会において死刑廃止条約が採択され、2007年5月には、国連拷問禁止委員会が日本の死刑制度の問題点を示して死刑の執行を速やかに停止するよう勧告し、2007年12月には、国連本会議がすべての死刑存置国に対し死刑の執行停止を求める決議を採択し、2008年5月には、国連人権理事会の審査でも日本の死刑制度には多くの問題点があり、速やかに死刑執行を停止するように勧告されている。そして、このような国際社会の努力の結果、2008年5月現在で、死刑存置国が60カ国であるのに対し、死刑廃止国は137カ国に達しており、死刑の廃止は、確実に世界の潮流になっている。それにもかかわらず、日本は、頑なに死刑制度に固執し、世界の動きに逆行して、死刑適用の拡大を推し進めている。
3.死刑が執行された場合、無辜の救済は不可能となり、取り返しのつかない事態を招来する。そして、現に、わが国では、過去、4つの死刑確定事件(免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)について再審無罪が確定し、また、昨年4月にも、佐賀県内で3名の女性が殺害された事件(北方事件)について無罪判決が確定するなど、死刑事件についても誤判や誤った訴追が存在することは、もはや常識になっている。
そして、このような誤判が生じるに至った制度上・運用上の問題点について、なんら抜本的な改善はなされておらず、誤った死刑判決に基づく執行の危険性は残されたままである。さらに、死刑は国家による殺人行為にほかならず、個人の尊厳という日本国憲法の根本的価値に反しているのではないか等の様々な疑問も、現に多くの国民の間で共有されているところである。
4.このような状況下、死刑制度の持つ問題点を明らかにし、死刑に関する国民的議論を展開することはきわめて重要であり、このような国民的議論が尽くされるまでの間、死刑の執行を停止することが切に求められ、日本弁護士連合会も、この見地から、死刑執行停止法案を策定している。特に、裁判員制度が始まり、国民が死刑制度に直接関わろうとするこの時期、市民を含めた徹底した議論を展開することは不可欠であり、そのためには、死刑執行の密行主義を排し、死刑に関する情報が可能な限り国民に公開されることも不可欠である。
5.当会は、改めて政府に対し、死刑制度全般に関する情報をさらに広く公開することを要請するとともに、死刑の存廃について国民的議論を尽くし、死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、重ねて強く要望する。
2008年(平成20年)9月17日
滋賀弁護士会 会長 河村憲司