どんなお悩みでも、まずはご相談を!

滋賀弁護士会法律相談センター TEL077-522-3238
平日午前9時-正午
午後1時-4時

会長声明・決議

淀川水系河川整備計画案に関する会長声明

1.改正河川法第16条の2第3項は「河川管理者は,河川整備計画の案を作成しようとする場合において必要があると認めるときは,河川に関し学識経験を有する者の意見を聴かなければならない。」と定める。この規定の趣旨は学識経験者が第三者的な立場から河川整備計画の内容について専門的知見をもとに評価することにより,当該河川整備計画が定める河川工事等の必要性やその治水及び環境上の課題等が客観的に明らかにされ,地域住民などの理解に資することにある。
淀川水系の河川管理者である国土交通省近畿地方整備局(以下「整備局」という。)は,河川整備計画案(以下「計画案」という。)を作成するにあたって,学識経験者の意見を聴取する必要性を認め,2001年2月,学識経験者で構成される淀川水系流域委員会(以下「委員会」という。)を設置した。従って整備局は河川法第16条の2第3項に基づき計画案を作成するにあたって真摯に委員会の意見を聴く法的義務を負う。

委員会は,2001年2月の発足以来,十分な審議を行ってきた。その結果,本年4月25日,委員会は,整備局の提示した「淀川水系河川整備計画原案」に対し,特に大戸川,丹生,天ヶ瀬及び川上の4つのダムの必要性について十分説得的な説明がなされていないという理由で,同原案の見直し及び再提示を求め,その上で委員会としての最終意見を提示する旨表明していた。更に,委員会委員長から整備局に対して,委員会の最終意見提示前に計画案を策定し関係府県に提示しないよう何度も申し入れていた。

このような状況の中で,整備局は,本年6月20日,前記4ダムの建設を盛り込んだ計画案を発表した。

さらに整備局は,委員長をはじめとする相当数の委員が作成した計画案に反対する意見書について,委員会規約において淀川水系整備計画案の変更について意見具申することについても委員会の目的としているにもかかわらず,単に整備局からの諮問がないという理由で,委員会の意見として取り扱わないという態度を取っている。

整備局は委員会の意見を真摯に聴いて,その意見を計画案に反映させたとは言えない。

2.改正河川法第16条の2第5項は「河川管理者は,河川整備計画を定めようとするときは,あらかじめ,政令で定めるところにより,関係都道府県知事又は関係市町村長の意見を聴かなければならない。」と定めている。これは,地域の意向を十分に反映するための手続きの一環として河川整備計画を作成しようとする場合に,関係都道府県知事の意見を聴くものとするという規定であり,地域の意見を反映した河川整備の計画制度の導入という河川法改正の趣旨からしても重要な規定である。
滋賀,京都,大阪の3府県知事は,整備局の発表した計画案について大戸川ダムの建設を計画案から外すよう求めることで合意し,本年11月11日には,三重県知事も含めた共同意見として計画案に反対している。

ダムの必要性に関して,整備局局長は本年7月8日の会見において「ダムの必要性は議論の余地がなく,国と府県で違うのは施策の優先順位だけ。」等と述べ,前記4ダム建設の方針を堅持する考えを示している。

整備局が知事の意見を無視して,計画案通りの河川整備計画を策定する事態が予想される。

3.整備局が,形式的に河川法が定める意見聴取手続を行ったとして,委員会及び関係府県の知事の意見を無視して計画案通りの河川整備計画を策定することは,河川行政に専門家や地域住民の意見を反映させようとした改正河川法の趣旨に反することになる。
以上の理由で,整備局に対し現在の河川整備計画案を撤回し,委員会及び関係府県知事の意見を十分反映させた計画案を再提示することを求める。

2008年(平成20年)11月17日

滋賀弁護士会 会長 河村憲司