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会長声明・決議

観護措置決定を受けて少年鑑別所に収容された全ての少年について国選付添人を選任する制度の実現を求める総会決議

1.弁護士は,捜査及び刑事裁判においては弁護人として被疑者・被告人の,少年審判においては付添人として少年の,法的援助を行っている。 特に,弁護士付添人は,非行事実の認定や保護処分の必要性判断が適正になされるよう少年の側に立って手続きに関与するだけでなく,家庭や学校・職場等少年を取り巻く環境の調整を行い,少年の立ち直りを支援する活動まで行っている。

少年たちの多くは,両親と対立関係にあったり,学校・職場に居場所がないなど,家庭や社会に対して疎外感をもち,信頼できる大人に出会えないままに非行に至っている。 したがって,少年審判において,そのような少年を受容・理解した上で法的援助を行い,その成長や発達を支援する弁護士付添人の役割は,少年の更生にとって,ひいては社会全体の利益にとっても極めて重要なものとなっている。

2.しかしながら,実際に少年審判において弁護士付添人が選任されている例は少ない。 2009(平成21)年に選任された弁護士付添人は,6,139人であるところ,その選任率は,少年鑑別所で身体を拘束されて審判を受ける少年(11,241人)の約49.5%,少年審判を受ける少年全体(54,254人)では約11.3%に過ぎない。 刑事裁判において約99%の被告人に弁護人が選任されていることと比較すると,心身ともに未成熟な少年に対する法的援助は極めて不十分な現状にある。

3.このような状況が生じている原因は,2007(平成19)年11月施行の改正少年法により導入された国選付添人制度が,その対象事件をいわゆる必要的弁護事件よりも限定した上,さらに少年鑑別所に身体を拘束された少年に対してのみ,家庭裁判所の裁量によって付すことができると大きく限定したからである。 そのため,2009(平成21)年に国選付添人が選任されたケースは,少年鑑別所に身体拘束された少年(11,241人)のうち,わずか516人と,約4.6%に過ぎない。

しかも,このような状況下において,2009(平成21)年5月21日には,捜査段階の被疑者国選弁護制度の対象がいわゆる必要的弁護事件の範囲にまで拡大されたため,捜査段階においては国選弁護人が就いていたにも関わらず,家庭裁判所送致後は弁護士付添人が就かないままに少年審判に臨まねばならない少年,いわゆる「置き去りにされた少年」が多数生じてしまっている。

4.我が国が批准する「子どもの権利条約」は,第40条2項(b)で「刑法を犯したと申し立てられたすべての児童は,……防御の準備及び申立において弁護人(又は)その他適当な援助を行う者を持つこと」と規定し,同第37条(d)で「自由を奪われたすべての児童は,・・・弁護人(及び)その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有する」と規定しており,少なくとも身体拘束を受けた少年には必ず弁護士と接触する機会が保障されなければならないとしている。

5.実際,少年鑑別所に身体を拘束された少年には,生育歴や家庭環境等に大きな課題を抱えているケースが多く,また,少年院送致等の重大な処分を受ける可能性も高いことから,弁護士付添人の援助を受ける必要性は高い。

しかし,多くの少年やその保護者には,弁護士付添人の費用を負担する資力がないか,仮に保護者に資力があっても少年のために費用を負担することに消極的な場合が少なくない。

そこで,日弁連は,少年に対する法的援助を保障する観点から,全国の会員から特別会費を徴収して設置した「少年・刑事財政基金」を財源として,弁護士費用を支払えない少年に私選付添人の費用を援助する少年保護事件付添援助制度を実施してきた。 同制度には,国費は一切投入されていない。 しかしながら,少年付添人の存在及び活動の意義に照らせば,当該援助制度は,本来的には国の責務において整備されなければならない性質のものであり,いつまでも弁護士の会費によって維持されるべきものではない。

6.よって,当会は,国に対し,少なくとも少年鑑別所に身体拘束された少年については,全面的に国選付添人制度の対象とするよう,速やかに少年法を改正することを求める。

2011(平成23)年3月24日
滋賀弁護士会