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会長声明・決議

民法改正に関するパブリックコメント手続延期を求める会長声明

2009(平成21)年11月より法務省法制審議会民法(債権関係)部会において民法(債権法)の全面改正に向けての審議が行われており、論点とりまとめ作業が進められている。 本年4月12日には、同部会において「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」と題された論点整理案が採用されている。 そして、現時点では時期が未定ではあるが、上記論点整理案に関するいわゆるパブリックコメント手続が行われる予定となっている。

民法は、国民生活や企業の経済活動等に直結する極めて重要な基本法であるから、同法の改正を検討するにあたっては、広く市民・消費者・労働者・企業・各種団体等に意見を求め、慎重に審議を行う必要がある。 とりわけ消費者・労働者・中小零細事業者など社会的弱者が不利益を蒙ることがあってはならず、同法の改正が公正で正義にかなうものとなるよう、十分に検討されなければならない。

ところが、本年3月11日に発生した東日本大震災により、東日本の太平洋沿岸部を中心に、広範囲に壊滅的な被害が発生し、今なお、多くの被災者が不自由な避難所暮らしを余儀なくされている。 また、福島第一原子力発電所の事故は、地震発生から約2か月を迎える現在でも事態の収束の目処が立っておらず、被災地域の住民や企業・各種団体等はもとより、日本全体が震災後の対応に追われている状況にある。

現在、立法に関しては、被災者を救済し、復旧・復興を支援するための特別立法こそが急務となっている。 かように深刻な社会情勢にもかかわらず、拙速にパブリックコメント手続や審議を進めた場合、民法(債権法)改正に向けての検討に国民や企業・各種団体等の意見を適切にくみ取ることができず、国民生活の実態や社会情勢の変動を十分に反映した内容とはならない危惧があるといわざるを得ない。 また、被災者救済立法が何よりも求められている状況下で、全般的な民法改正を世に問うことに国民の理解が得られるかについても、疑問がある。

被災地である仙台弁護士会から既にパブリックコメント手続の延期等を求める会長声明が出され、その後も大阪弁護士会や兵庫県弁護士会、福岡県弁護士会、札幌弁護士会から同様の会長声明が相次いで出されている。

今回の民法改正の議論は、その範囲がきわめて広範に及ぶものであり、パブリックコメントの手続の中で広く国民が意見を述べるためには、十分な時間的余裕が必要である。 当会としても、国に対し、東日本大震災に伴う混乱状況が収束し、かつ、国民生活及び企業活動等が落ち着きを取り戻すまでの相当期間、少なくともパブリックコメント手続を延期すること、あわせて、東日本大震災の影響に十分配慮した審議日程を組むことを求めるものである。

2011(平成23)年5月18日
滋賀弁護士会
会長  土井 裕明