会長声明・決議
集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明
2014(平成26)年7月1日、政府は、歴代政権が憲法上禁じてきた集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の変更を閣議決定した。
集団的自衛権の行使は、憲法第9条の許容するところではなく、そのことはこれまでの政府の憲法解釈においても長年にわたって繰り返し確認されてきたことである。2004(平成16)年6月18日の閣議決定においては、「政府による憲法の解釈」は「論理的な追求の結果として示されてきたもの」とし、「政府において、憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをするとすれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねないと考えられる」と説明され、さらに当時の首相は、かかる閣議決定を踏まえ、憲法と集団的自衛権の問題について、「便宜的な解釈の変更によるものではなく、正面から憲法改正を議論することにより解決を図ろうとするのが筋」と国会で答弁しているのである。
そもそも立憲主義とは、憲法により権力を拘束するというものであり、日本国憲法も立憲主義によって立つものである。立憲主義を担保するものとして、日本国憲法は憲法を最高法規と定め(憲法第98条)、内閣総理大臣及び国務大臣には憲法を尊重し擁護する義務(憲法第99条)が課せられ、厳格な憲法改正手続(憲法第96条)が定められているのである。
権力を拘束するための法である憲法について、拘束される側の都合のよい解釈を行うことにより、その拘束を緩やかにしてしまうことは、立憲主義の否定に等しい。
集団的自衛権の行使は、歴代政府が長年にわたり認められないと解釈してきたものであること、これを容認することは国家の在り方を根本的に変えてしまうことになることから、集団的自衛権行使を容認するというのであれば、それは憲法改正の手続によらなければならない。にもかかわらず、政府に都合のよいように憲法解釈の変更を閣議決定で行うというのは、一国の首相としてあるまじき憲法尊重擁護義務(憲法第99条)に反する行為であり、立憲主義に根本から違反する行為である。そして、本閣議決定は、恒久平和主義(憲法前文・第9条)に反するので、憲法の最高法規性(憲法第98条)により、効力を有しないと断ずるべきものである。
滋賀弁護士会は、本年5月28日に「憲法第9条の解釈変更により集団的自衛権の行使を容認しようとする動きに反対する決議」をあげた。また、日本弁護士連合会も、全国の全弁護士会も、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認に反対する決議又は会長声明をあげている。
当会は、集団的自衛権の行使等を容認する本閣議決定に対し、強く抗議し、その撤回を求めるとともに、今後の関係法律の改正等に反対するものである。
以上
2014(平成26)年7月15日
滋賀弁護士会
会長 近藤公人