会長声明・決議
歯および口腔の健康づくりの施策として「フッ化物洗口」を実施することに反対する意見書
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滋賀県は、「滋賀県歯および口腔の健康づくりの推進に関する条例」案要綱を作成し、同条例を制定しようとしている。
同条例案要綱では、「教育関係者は、基本理念にのっとり、幼児、児童、生徒等の歯および口腔の健康状態に注意し、フッ化物洗口、歯磨きその他歯および口腔の健康づくりに資する取組の実施により、当該幼児、児童、生徒等の歯科疾患等の予防その他歯および口腔の健康づくりに努めるもの」(第5、第3項)とし、さらに、「県は、……保育所、幼稚園、小学校、中学校等におけるフッ化物洗口および歯磨きの普及その他歯および口腔の健康づくりに関する効果的な取組の推進のために必要な措置を講ずるもの」(第14、第1項)「知事または県教育委員会は、幼稚園、小学校、中学校等においてフッ化物洗口が実施される場合には、……フッ化物洗口の円滑な実施のために必要な援助の実施に努めるもの」(第14、第2項)と規定している。
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しかし、フッ化物洗口には、以下のような問題点が指摘されている。
第1に、フッ化物洗口には、急性中毒、過敏症状の危険性があり、幼児・低学年児童においては、誤飲の可能性も否定できず、誤飲した場合の身体影響への懸念も払拭されていない(安全性)。
なお、WHO専門委員会報告書(1994年)は、6歳未満のフッ化物洗口を禁忌としている。
第2に、フッ化物洗口の有効性は、従来考えられてきたより低い可能性があり、フッ素配合歯磨剤が普及している現状においては、フッ化物洗口による併用効果にも疑問がある(有効性)。
第3に、虫歯予防には、フッ化物洗口以外にも様々あり、虫歯が減少している現状において、学校などにおいて、集団的にフッ化物洗口を実施する必要性・相当性には重大な疑問がある(必要性・相当性)。
第4に、有効性安全性について、追加調査がなされていない。
第5に、集団によるフッ化物洗口後の廃液により、水質汚濁防止法・下水法上の排水規制違反など環境汚染のおそれがある。
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日本弁護士連合会は、2011(平成23)年1月21日、「集団フッ素洗口・塗布の中止を求める意見書」にて、上記問題点を指摘し、厚生労働省、文部科学省等に対し、学校等で集団的に実施されているフッ素洗口・塗布を中止するよう求めた。
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条例案が施行されれば、保護者等に安全性・有効性・必要性などに関する否定的な見解も情報提供されないまま、県による組織的な推進施策の下、学校などで集団的にフッ化物洗口が実施されることになる。
このように集団によるフッ化物洗口を行うことは、前記の問題点の情報提供がないまま保護者等が意思決定を行う結果となり、これは自己決定権が侵害されるのと同じである。
よって、当会は、「滋賀県歯及び口腔の健康づくりの促進に関する条例」案において、歯及び口腔の健康づくりの施策として「フッ化物洗口」を実施することに反対する。少なくとも、幼児・低学年児童に対し、フッ化物洗口は実施すべきではない。
以上
2014(平成26)年11月26日
滋賀弁護士会
会長 近藤公人